
「性別適合手術を受けたいけれど、費用がよくわからない」
「性別適合手術が保険適用になるって本当?」
「貯金はどれくらいしておけば安心?」
このようなお悩みを抱えていないでしょうか。FTMの性別適合手術、通称SRS(Sex Reassignment Surgery)を受けるためには、高額な費用がかかります。
手術を受けるだけではなく、その後の生活のことも考えなければならないため、余裕をもった準備をしておくことが重要です。
今回は、FTMの性別適合手術にかかる費用相場や、保険適用、医療ローンなどについて紹介します。一つの指標として、ぜひ参考にしてください。
目次
FTMの性別適合手術の費用相場

結論からいうと、FTMの性別適合手術の費用相場は60~300万円です。金額に大きな幅があるのは、どの手術を受けるかによって費用が変わるためです。
性別適合手術には、以下の種類があります。
- 子宮・卵巣摘出手術
- 膣閉鎖
- 陰茎形成術
上記の中から自分が望む手術のみを受けるため、同じFTMでも手術の費用に大きな差があります。なお、乳腺摘出手術(胸オペ)は生殖機能に影響がないため、性別適合手術には該当しません。
性別変更に性別適合手術は必須ではない

2023年に、性別適合手術を受けずに女性から男性への性別変更が認められる判例が出たことにより、性別変更の要件として性別適合手術は必須ではなくなりました。
この判例が認められるまでは、以下の条件をすべて満たしていなければ性別変更ができなかったため、性別適合手術を受けることが、事実上の必須条件でした。
- 二人以上の医師により性同一性障害であることが診断されていること
- 18歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
5番目の「生殖腺がないこと」の要件は、憲法13条※1に違反しているため「無効である」との判決が下され、性別適合手術なしでの性別変更が認められるようになりました。
とはいえ、性別変更をするためには依然として家庭裁判所に申し立てを行い、審判を受ける必要があります。1~4の要件は引き続き必須となっており、6の条件は男性ホルモン治療によって外陰部が男性化していれば要件を満たします。
性別変更の際は「性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律」に基づき、審判が行われます。
※1 憲法13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
FTMの性別適合手術にかかる費用の内訳

FTMの性別適合手術にかかる費用の内訳をステップごとに紹介します。なお、乳腺摘出手術は性別適合手術ではありませんが、多くのFTMの方が受けている手術なので、一緒に紹介します。
また、手術前に受けるカウンセリングやホルモン注射代についても紹介しますのでぜひ参考にしてください。
※この記事で紹介する費用は、あくまで相場です。手術を受ける国や、病院によって異なるのでご注意ください。ここでは、タイのヤンヒー病院と、日本のナグモクリニックの料金を参考にしています。
参照:ヤンヒー病院(タイ)でのSRS・性別適合手術のご案内|ディープラス
参照:料金のご案内|性同一性障害(GID)の総合診療|ナグモクリニック
STEP1.カウンセリング・診断書
性別適合手術を受けるためには、医師の診断書が必要になるためカウンセリングに通い、診断書を作成してもらわなければなりません。費用の相場は、3~6万円です。
| 内容 | 費用相場 |
| カウンセリング(5回と仮定) | 1回3,000円×5回=1万5,000円 |
| 診断書 | 約5,000円 |
ガイドラインに沿って治療を進める場合は、2人の医師から診断書を作成してもらわなければなりません。
カウンセリングに通い始めてから診断書をもらえるまでの期間は、個人差があります。数ヶ月でもらえる場合もあれば、1年以上かかることもあります。
また、通院費もかかるので、病院選びは慎重に行いましょう。
STEP2.男性ホルモン注射
ホルモン治療の相場は、1回1,500円~3万円です。現在、日本で製造されている男性ホルモン注射の規格は3種類あり、どれを打つのかによって費用が変わります。
| 規格 | 頻度 | 費用 |
| 125mg | 約2週間に1回 | 約1,500円 |
| 250mg | 約3週間に1回 | 約3,000円 |
| 1,000mg | 約6ヶ月に1回 | 約3万円 |
ホルモン注射を打つ頻度は個人差があり、体内のホルモン値によって変わります。そのため、定期的にホルモン値を検査する必要があります。
また、ホルモン注射は性別適合手術を受けた後も、継続して打ち続けなければなりません。
男性ホルモン注射の種類や副作用については、以下の記事で詳しく紹介しています。
STEP3.乳腺摘出手術
乳腺摘出手術にかかる費用相場は、50~80万円です。胸の大きさによって術式が変わるため、費用に差があります。
| 病院 | 術式 | 費用 |
| ヤンヒー病院 | U字型切開 | 約43万円 |
| I字型切開・T字型切開 | 約51万円 | |
| ナグモクリニック | 要問合せ | 約55~88万円 |
元の胸の大きさや、年齢、ナベシャツの使用年数(胸が垂れているかなど)で術式が変わります。
STEP4.子宮卵巣摘出手術
子宮・卵巣摘出手術の相場は、40~140万円です。「どの国で受けるのか」「どのような術式で受けるのか」によって、金額に大きな差があります。
| 病院 | 術式 | 費用 |
| ヤンヒー病院 | 開腹 | 約37万円 |
| 腹腔鏡・経腟 | 約51万円 | |
| ナグモクリニック | 開腹 | 約96万円 |
| 腹腔鏡 | 約135万円 |
開腹式手術は、下腹部を切開するため傷が大きく目立つ術式です。予算の少ない人には選択肢の一つですが、術後の回復も遅くなります。
腹腔鏡手術は、腹部に4箇所程度の穴を開けて摘出する方法です。開腹手術より傷口は小さいものの、腹部に小さな傷が残ります。「低侵襲(ていしんしゅう)手術」とも呼ばれています。
経腟手術は、膣から手術機器を入れて摘出する方法です。体に最も負担がかからない術式で傷も残りません。ただし、FTMの方は、分娩経験や性交渉が少ない(膣への挿入)ため、手術難易度が高くなり、適応できない場合があります。
STEP3&4.乳腺摘出手術・子宮卵巣摘出手術の同時手術
乳腺摘出手術と、子宮卵巣摘出手術は同時に行えます。費用相場は93万円~200万円です。
| 病院 | 費用 |
| ヤンヒー病院 | 約93万円 |
| ナグモクリニック | 約140~200万円 |
胸の術式と、子宮卵巣摘出手術の術式の組み合わせによって費用が変わります。
STEP5.膣閉鎖・尿道延長・陰茎形成
膣閉鎖と尿道延長、陰茎形成の費用相場は、250~350万円です。
| 病院 | 術式 | 費用 |
| ヤンヒー病院 | 膣閉鎖・尿道延長・陰核形成 | 約70~105万円 |
| 陰茎形成 | 約145万円 | |
| ナグモクリニック | 膣閉鎖 | 約44万円 |
| 尿道延長・陰核形成 | 約92万円 | |
| 陰茎形成 | 約225万円 |
陰核形成は体への負担が大きく、合併症などのリスクも高いため、手術を受ける人は少ないといわれています。
性別適合手術にかかるその他の費用

性別適合手術にかかる費用は、手術代だけではなく、以下の諸費用がかかるため見落とさないようにしましょう。
性別適合手術を海外で受ける際の諸費用
性別適合手術を日本ではなく海外で受ける場合は、以下のような経費がかかります。
- パスポート代
- 航空券代
- 滞在中の観光代
- アテンドサービス代
アテンドサービス代は、手術内容(滞在期間)やサービス内容によって変わります。費用相場は手術代に加えて30万円~50万円程度です。タイでの手術費用は安いものの、アテンド会社を利用するとほとんど変わらない場合もあります。
また、アテンド会社によって設定料金は異なるため、信頼できるアテンド会社を選ぶことが大切です。
性別適合手術後の生活費
性別適合手術を受けた後、すぐに仕事に復帰できない場合は生活費の確保が必要です。手術内容によっては、休職が必要な場合もあるでしょう。
有給休暇だけでは、まかなえない可能性も考えられるため、十分な生活費を確保しておくと安心です。1ヶ月に必要な生活費がどれくらいなのかは個人差がありますが、手術代に加えて3ヶ月程度生活できる貯金があれば、ひとまず安心できるのではないでしょうか。
性別変更のための費用
性別変更のための費用もかかります。裁判所への申し立てにかかる費用は数千円程度で済みますが、書類提出を外部に依頼する場合は数万円の報酬が必要です。
具体的には以下の費用が発生します。
- 戸籍謄本代
- 収入印紙代
- 連絡用の切手代
- 裁判所までの交通費
性別変更後は、免許者や金融機関などの各種手続きが必要です。
性別適合手術は保険適用で受けられるが条件が厳しい

2018年の診療報酬改定で、性別適合手術も健康保険の適用対象となりました。つまり、3割負担で手術が受けられることになったのです。
しかし、ガイドラインでは「性別適合手術の前に必要」とされているホルモン療法が、保険適用外となっています。そのため、ホルモン療法を行っている人は「混合診療」と判断され、保険適用で性別適合手術を受けられません。
また、保険適用となるためには、一定の施設基準を満たした「病院」に限定されています。いわゆる「クリニック」と呼ばれる診療所は対象外となっているので、全国どこでも保険適用で性別適合手術を受けられるわけではありません。
結果として、実際に性別適合手術を保険適用で受けた方は、ほんのわずかです。理由は明確で、性別適合手術の前にホルモン療法をしているFTMの方がほとんどだからです。
性別適合手術が保険適用になったものの、実際はほとんど適用されていないのが現状です。
性別適合手術の際はローンの利用が可能

性別適合手術の際は、ローンの利用が可能です。病院によっては医療ローンのオプションを提供している場合があります。
また、銀行などでメディカルローンを利用できる可能性もあります。希望の銀行で医療ローンの取扱いがない場合は、フリーローンやカードローンを検討してもよいでしょう。
SRSを受ける際は余裕をもった資金を調達しておこう

SRSを受ける際は、余裕をもった資金を調達しておきましょう。手術代だけではなく、手術後の万が一のリスクを考えておかなければなりません。
また、トランスジェンダーを取り巻く法律は、徐々に変わってきています。自分らしく生きていくために自分はどうありたいのか、そして、そのためにはどのような道を選択するべきなのか、焦らずゆっくり考えてみてください。








