
トランスジェンダー当事者として、過渡期に困ること。
正直それは、数えきれないくらいある。わんさかある。
埋没している今も困ることはあるけれど、特に精神的に負担を感じたのは過渡期だった。
僕らのいう過渡期とは、ホルモン注射を打ったり改名したりと、性別変更のために奮闘していた時期で、戸籍上の性別がまだ女性のとき。
つまり「見た目は男、戸籍は女」のとき。
今回は、僕らの経験談をもとに困ったこと、そして対処法を紹介します。
過渡期に困ったこと
僕らが過渡期に困ったことと、どのように対処してきたのかを紹介します。
少しでも参考になればうれしいです。
身分証が必要な手続き
まず面倒だったのが、身分証が必要な手続き。
例えば、クレジットカードの作成や銀行口座の開設など。
特に、電話で本人確認をされるときが面倒でした。
声は男性なのに、書面上の性別は女性だから、電話相手は大抵怪しがる。
「失礼ですが、ご本人ですか?」と聞かれたり、時には「風邪…ですか?」とか、心配してくれちゃったり。

「どう考えても本人じゃないでしょ?」と、
確実に疑われているのが分かるよね。

詐欺?的なね。
まぁ本人確認は必要だから、いたしかたないけどね。
僕らの過渡期は、今から約10~15年前。
LGBTに対する社会的な認知度は、まだまだ低かったと記憶している。
「声低いってよく言われます」とか知らんぷりして押し通したり、それでも疑いが晴れない(?)ときはきちんと説明したりと、相手の出方によって対応を変えていた。
説明しても、あまり分かってもらえないこともあったけれど。
先方は納得していないのに電話を切っているんだろうな、と感じることもあったかな。
今思えば、誠実にきちんと説明するのが一番良いと思います。
傷口えぐられるみたいで嫌だけどね。
身分を証明できなければ、作成できないものもあるので「仕方ない」と割り切るしかないかな、と。
職場・学校での対応
職場や学校での対応に困る人もいると思う。
僕らの過渡期は、おもち社会人、おまめ学生。
それぞれどんな感じだったのか、紹介しようと思う。
【おもち】社会人
僕は、ホルモン注射を打ち始める前から、自分がトランスジェンダーであることを直属の上司にカミングアウトしていた。
上司は、ちょうどひと回り年上。
「巳年の男は粘り強くて執念深いんだぜ?」と、いつも言っていた人。
上司は、良くも悪くも僕の性別にはあまり興味がない感じだったが、サシで飲みに行くこともあるくらいかわいがってもらっていた。
ホルモン注射の影響で声が変わり始めたときは、「なんかその時代懐かしいわ。声出にくいよなw」と言って笑い飛ばしてくれるような人。
他の従業員も、「ホルモン注射打ってるの?へぇ~そうなんだ」という感じ。
副作用で肌荒れがひどかったときは、女性社員さんがおすすめのコスメを教えてくれたり。
今となっては、最大限に気を遣った対応をしてくれていたのだと思う。
感謝。
小さな会社だったため、困ることもさほどなく。
環境に恵まれたと思っております。
【おまめ】学生
僕は、20歳からホルモン注射を打ち始めた。
大学を卒業する前にSRS手術を済ませて戸籍を変えると決めていたのだけれど、周囲には全然カミングアウトしておらず…。
やっぱカミングアウトって今でもすごく勇気のいることで、他人からどう見られるかを気にしすぎる僕にとっては、難関中の難関。
周囲の人たちには、ホルモン注射を打つタイミングで重い腰を上げて、徐々にカミングアウトしていった。
でも、豆腐メンタルだった僕にとってはやっぱり精神的にもキツかった。
カミングアウトしたときの周囲の友達は、そうだと思ってたから別に…ぐらいの薄い反応だったんだけども。
知人…いや、むしろ知らない人の目や、学校の教職員への説明、アルバイトの面接で一苦労。こんなんじゃ社会に一生適用できないんじゃないか…と不安でたまらない時期だった。学校での着替えとかトイレも地味に困った。あまり使用されない男子トイレにこっそり入ったりしてたな。
それでもガッツリと支えてくれた友人には今でも感謝しております。
医療関係
病院にかかったときも面倒だった。
やはり保険証の性別と、見た目のギャップがあるから。
「医療機関なんだから察してくれよ」と思ったけど、当時はそうもいかないことも多かった。
根掘り葉掘り聞かれ、不快な思いをしたこともある。
呼び出しの際に、下の名前を呼ばれることも嫌だったな。
診断書を貰うためカウンセリングに通っていたクリニックは、名字だけで呼んでくれるなどの配慮があったけれど。

僕の病院嫌いは、この時代から始まったのかもしれない。
風邪を引いても、病院に行かなくなった。
というか、体が丈夫だから病院に行く機会が今も昔もあまりないけど。

僕は、昔から虚弱体質なので、病院によく行っていた。
そして、今もよく行っている。
現在、医療機関がどのような対応をしているのか、どれほどの理解があるのかは分からない。
でも、当時よりも理解は進んでいる、いや進んでいて欲しいと思う。
社会的な反応と人間関係
人間関係にも悩まされた。
特に、友人とも呼べないような…あれは知人というのだろうか。
顔見知りというか、そういう人たち。
声変わりや改名をした僕らの新しい世界に、適応できないのだ。
適応してほしいとは言わないが、ざわざわしているのがよく分かる。
まぁ、物珍しさから気になる気持ちは分からなくもない。
面と向かって聞いてくれればいいのだけれど、これが聞いてこないんですよね。
気を遣ってなのか、関わりたくないのかは謎だけれど。

チラ見しながらヒソヒソ話をされると不快だったなぁ。

悪口言われてるのって、不思議と気づいてしまうんだよね。
この現象に名前を付けたい。
「悪意のあるニヤつき」とでも言っておこうか。
でもそんな時は、気にしないのが一番だと思う。
いや、気になるけどね。
でも、自分にとってどうでもいい人の意見なんて、無視すればいいのさ。
互いの人生に関わることはないので、と。
自分を見失わないように。
そして、自分の大切な人を大切にすることが大事。
ゴミくずは相手にしないで、大事な人に時間を使った方が100倍幸せなのさ!
身分証の提示
身分証を提示しなければならないシーンもとにかく嫌だった。
何かと多いんだよね、携帯ショップとか書類を申請する時とか。
あと、FTMって童顔な人が多いから、居酒屋とかで年齢確認されること多いと思うんだよね。

ここだけの話、僕はつい最近まで年齢確認されていたんですよねぇ。
今は、嫌というよりも、シンプルに恥ずかしいですわ。
記録更新中。

おもちは僕より童顔だからね。でもあなた、30代だからね?
弟としても、さすがにそろそろ勘弁してほしいよ。
今では笑い話にできるけど、過渡期は嫌で嫌でたまらなかった。
身分証の性別欄を、何度も指でなぞるおばさん。
身分証と人の顔を、何度も見比べるおばさん。
「え?よく分からないけど、身分証の性別間違ってる?」と、指摘するおばさん。…なんかありがとね。
僕らのおすすめの身分証は免許証。
なぜなら性別が載っていないから。
もし年齢確認されても、顔と生年月日しか見ない。
最近だと、マイナンバーカードも性別欄見えないように、外側のフィルムついてたりするからいいかもしれない。
日常生活のギャップ
日常生活のギャップにも悩まされた。
特に、ホルモン注射を始めて状態が安定してくると、日常生活のギャップが生まれやすい。
初見の人は、大体男性と思って接してくるようになるから。
それは別に問題ない、というか、むしろいいことなんだけど、カミングアウトしなければならないシーンになると面倒だった。

僕は、ちょうど過渡期に転職をしたんだけど、
面接時にカミングアウトしたら
「女の子になりたいってこと?」と聞かれたことがある。

新しい友達ができた時も、面倒に感じた。
ホルモン注射・改名済みだけど、
胸オペしていない状態で旅行に誘われた時とかね。

「実は、戸籍上は女性なんですよね」
という風に、カミングアウト方法が変わるよね。
そりゃ、周りも訳が分からなくなると思う。
でも、誰も悪くない。これだけは事実です。
しかしゼロから話さなきゃならないので、説明が面倒でした。
過渡期に対して思うこと
運が悪いことに、過渡期って20代の人が圧倒的に多いと思う。
しかも、ちょうどその世代って、身分証を提示する機会が多いと思うんですよ。
クレジットカード作ったり新生活始めたりと、ちょうど新しく挑戦したいことも増えてくる時期だと思うので。
それなのに、ちょうどいい具合に「ギャップ」という壁を感じるから、何かを始める際に億劫になることがある。
でも、こればっかりは避けて通ろうとしても、完全に回避することは無理だと思う。
だから、自分の中で「定型文」をいくつか作っておくといいかもしれない。
その場その場で、いちいち考えるのは面倒なので。
「私はトランスジェンダーで、現在男性ホルモン治療をしています。そのため声が低くなっていますが、戸籍上はまだ女性です」
こんな感じで、要点をまとめたシンプルなものがいいかと思います。

たしかに、棒読みでも端的に伝わっていいかも。
心を無にすれば大丈夫!

たぶんだけど、
それが一番自分にダメージ少ないよね。
ぜひ参考までに。
最後に…
なかなか伝えたいことがうまく伝わらずに、イライラすることもあると思う。
聞く側の聞く姿勢にもよるけど。
でもそんな時は、ぜひこの言葉を思い出して欲しい。
「もし、君の話を聞いてくれない人がいても怒っちゃダメだよ。
耳にほこりが詰まっているだけかもしれないからね」
プーさんが言ってました。
あのくまさんが。
それでは、また。





