
LGBTQを象徴する6色のレインボーフラッグは、今では世界共通です。
このレインボーの旗は、アメリカのデザイナーであるギルバート・ベイカー氏がデザインしたことで知られています。
ベイカー氏は2017年に65歳で亡くなりましたが、彼は一体何から着想を得てレインボーのデザインにしたのでしょうか。
今回は、諸説あるうちの一説を紐解いていきたいと思います。(※個人的な見解を含みます。)
目次
映画『オズの魔法使』から着想を得た?

ベイカー氏は『オズの魔法使』に着想を得たのでは?という説があります。
『オズの魔法使』は名作映画なので、観たことがある方も多いのではないでしょうか。
あらすじを簡単に説明をすると、『オズの魔法使』の主人公はアメリカに住むドロシー。ある日、ドロシーは竜巻で夢の国へ飛ばされてしまいます。ドロシーは故郷に帰るため、愛犬のトト、臆病者のライオン、脳のないカカシ、心のないティマンと魔法使いの元へ。しかし、一行を待ち受けていたのは悪い魔女との戦い...。さまざまな冒険をしながら困難を乗り越えていく、というファンタジー映画です。
主役のドロシーを演じたのは、当時17歳のジュディ・ガーランド。ジュディは、『オズの魔法使』をきっかけに、一躍スターとなりました。
そして注目すべきは、主題歌の「Over the Rainbow/虹の彼方」。
ベイカー氏は主題歌の「Over the Rainbow」に着想を得たのではないか、という説があるのです。
ただし『オズの魔法使』は、表面的にはLGBTを題材としていません。
しかし「劇中にLGBTを示唆する流れがある」と、ある学者たちは何時間も議論を重ねたといいます。
普通に観ていれば気にはなりませんが、それに気づく要素が劇中にちりばめられているのです。
また、『オズの魔法使』の制作スタッフには、ゲイが多かったという噂もあります。
ただし、ベイカー氏の死後に出版された自伝には、レインボーフラッグと『オズの魔法使』を結びつける説明はどこにもありません。
LGBTと『オズの魔法使』

劇中でLGBTを連想させる表現とは、一体どのようなものだったのでしょうか。
この考察は、一部ネタバレを含むのでご注意ください。
- オズの国の色彩
- ドロシーが引き連れる仲間の女性らしさ
- ドロシーとカカシが出会うシーン
オズの国の色彩
『オズの魔法使』が公開されたのは1939年。当時はカラー映画が珍しく、モノクロが主流の時代でした。
劇中では、ドロシーが住むアメリカのカンザスをモノクロ(セピア色)、オズの世界をカラーで描いています。
モノクロのフィルムに色付けをしたため、現代の人が見ると少し不自然なきつい色彩に感じるかもしれません。しかし、この表現が「幻想的な魔法の世界を表現している」と、高い評価を得ています。この「目を引く色彩」が、LGBTを連想させたのでしょう。
ドロシーが引き連れる仲間の女性らしさ
ドロシーの仲間には、臆病なライオンとブリキ男がいます。
ライオンが涙を流すシーンがありますが、ライオンは自分のしっぽで涙を拭うのです。その仕草が「女性的」と捉えられています。
また、ライオンが歌うナンバーに「When you’re to be a sissy」という一節が出てきますが、「sissy」は直訳すると「女々しい」「弱虫」「女の子のような男の子」という意味から転じて「同性愛者」を指す意味でも使用されます。
そしてブリキ男は、まつ毛が長く「My,my,my goodness!(な、な、なんてことかしら!)」など、女性的な言葉を使います。
このような表現も、LGBTを彷彿とさせるのでしょう。
ドロシーとカカシが出会うシーン
そして、ドロシーとカカシが出会うシーン。
カカシは両腕を交差させ、ふたつに分かれた道を指し「People do both way!(どっちの方向でも大丈夫さ!)」と言います。
この表現が「異性愛・同性愛どちらでもいいさ!」と解釈される説もあるようです。
ドロシーを演じたジュディ・ガーランドの波乱万丈な人生

17歳という若さで主演を演じたジュディ・ガーランドは、アメリカで「伝説」と呼ばれるスターのひとりです。
一躍スターの階段を駆け上がったジュディですが、その後の彼女の人生は壮絶でした。彼女は、大人に食い物にされたのです。
周りの大人たちは、太りやすい体質だったジュディに「やせ薬」と称し覚せい剤を与え、休みなく働かせるために睡眠薬を与え続けたのです。(当時は、覚せい剤や睡眠薬が体へ与える影響が十分に解明されていなかったといいます。)
そしてジュディは、薬漬けになりアルコールに溺れます。プライベートでは、結婚と離婚を繰り返し、破滅的な人生を歩むことになるのです。
ジュディは、人前で演じている自分と、現実の自分との不一致に苦しんだといいます。それでも彼女は、「自分らしく生きよう」と必死だったのです。そして彼女は、なにより度胸があったといいます。
当時、自分たちの性的指向を隠していたゲイの人々にとって、自分たちと重なる部分があったのでしょう。そのため、ゲイ(当時のゲイという表現は、現代のLGBTQを包含する)の人々にとってジュディは特別な存在でした。
ジュディは1960年代のアメリカで、同性愛に対して理解を示していた数少ない著名人のひとりだったからです。なお、ジュディ自身はバイセクシャルだったといいます。
しかし、ジュディは薬物とアルコールで体はボロボロ。47歳という若さで、波乱万丈な人生の幕が下りました。
そしてジュディは、ゲイ・カルチャーのアイコンとなりました。現代人でいうと、マドンナやシェール、エルトン・ジョンやフレディ・マーキュリーなどが該当します。
ジュディがゲイのアイコンとなっている理由

ジュディがゲイ・アイコンとなったきっかけは、『オズの魔法使』のドロシー役がきっかけです。個性の強い仲間の、よき理解者・支持者であったドロシーに、自身を重ねたゲイが多くいたのでしょう。
ゲイ・アイコンと呼ばれるスターのなかでも、ジュディは最も有名です。
ジュディがアイコン化したことを示す証拠として「Are you a friwnd of Dorothy?(キミはドロシーの友達?)=キミは同性愛者?」という言葉が隠語として使われました。
ジュディがゲイの人々に愛されたきっかけは『オズの魔法使』でしたが、理由はそれだけではありません。
- オズの魔法使いのメッセージがLGBTQが抱える気持ちとリンクする
- ジュディの人生そのものとリンクする
- ジュディの曲に励まされた
- ジュディがLGBTQを愛した
自由なイメージが強いアメリカでも、かつては同性愛が違法だった時代があります。
ジュディの生きた時代、ゲイへの差別は強烈でした。ゲイであることをオープンにしている人は少なく、自分のセクシャリティを隠して生きる人が多かったのです。
そんななか、ジュディは「ゲイのファンが多いことが気にならないか?」と、記者に質問をされます。そしてジュディは「全然。私はみんなに歌うから。」と答えたそうです。
ゲイの人たちにとって、これほど勇気づけられることはないでしょう。ジュディを、ゲイ・カルチャーのアイコンとして盛大にまつる気持ちも分かります。
虹の向こうには素敵な場所がある

『オズの魔法使』で、ジュディ演じるドロシーが「Over the Rainbow」を歌ったシーン。愛犬のトトをいじめるおじさんから「逃避したい」「虹の向こうには素敵な場所がある」と、ドロシーは切に願い歌っています。
ベイカー氏が『オズの魔法使』から着想を得たか否か、その真相は分からないままです。
それでもジュディは、虹の象徴となりました。さまざまな苦しみから解放され、虹の向こう側で幸せに歌っていることでしょう。







