
FTMの男性ホルモン治療で体に及ぼす影響は、まだ不明な点が多いのが現状です。そもそも男性ホルモンは、生物学的に女性の人に対して打つ想定をしていないからです。
一昔前まで「ホルモン注射を打つと寿命が短くなる」という噂が絶えませんでした。
ネット上では、「男性ホルモン注射を打っているFTMは45歳までしか生きられない」という誤った情報も拡散されていたのです。
本記事では、医師や論文の情報をもとに、現段階でわかっている情報をお伝えします。
目次
男性ホルモンを注射すると寿命は短くなる?

結論から言うと、「男性ホルモン治療で寿命が短くなる」という医学的根拠はありません。
裏を返せば、FTMへの男性ホルモン注射の研究結果がほとんどないということです。
プラス面・マイナス面でさまざまな影響があるため、総合的な評価が難しいといわれています。
たとえば、乳房切除や子宮・卵巣を摘出した場合、がん予防の治療とも捉えられます。ただし、男性ホルモン治療をすると、肝機能障害や多血症などの副作用があり、脳血管疾患や心疾患などのリスクが高まる可能性があります。
このように、一概に「良い」「悪い」は判断できないのです。
男性ホルモン治療において重要な点は、適切な量や頻度を守ることです。
男性ホルモン療法によるFTMの死亡率

360人のFTM(ホルモン治療歴・平均18年)を対象とした海外の論文によると、一般人口に対してFTMの死亡率は「1.12倍」という結果が出ています。つまり、男性ホルモン注射を原因とする死亡率は高くも低くもないということです。
この調査結果を見ると、ホルモン注射で寿命が短くなるとは明言できません。
一方で、FTMの男性ホルモン療法に関する研究は進んでいないことも事実です。
長期的な研究結果が少ないことが懸念点とされており、今後の課題として、データの蓄積を続けていくことが求められています。
男性ホルモン治療中のFTMの死因

同調査結果によると、FTMの主な死因は、自殺・HIV・心血管系疾患・薬物中毒で、乳がんによる死亡者はいませんでした。
がんを原因とした死亡率は高くありませんが、血液のがん・肺がんの罹患率が高くなっています。
男性ホルモン治療をしていても、心臓疾患やがんなどの罹患率は生物学的な男女とほぼ変わりません。ただし、糖尿病のみ罹患率が上がっていること、肥満、血圧上昇などのリスクが高まるという研究結果もあります。
なお、日本人の死因第1位は「悪性新生物(がん)」です。そして、2位に「心疾患」、3位に「老衰」と続きます。
死因は世代によって異なり、20代から30代の死因第1位は「自殺」です。
参照:博士学位論文 Female-to-Male トランスジェンダー|東京大学学術機関リポジトリ
トランスジェンダーの自殺意識調査
認定NPO法人「ReBit」は、2022年に『LGBTQ子ども・若者調査2022』を実施しました。全国の12歳から34歳のLGBTQ当事者、2670名を対象におこなったアンケートです。
「自殺」に関するアンケート結果は以下のとおりです。
| 自殺念慮(考えた) | 自殺未遂(しようとした) | 自傷行為(わざと傷つけた) | |
| 10代 | 48.1% | 14.0% | 38.1% |
| 20代 | 40.3% | 7.5% | 21.7% |
| 30代 | 31.4% | 7.4% | 15.1% |
アンケート結果から、若い世代であればあるほど自殺企図率が高いことがわかります。性別に基づくいじめや差別を受けた経験がある場合に、自殺のリスクが高まっているのです。
参照:【調査速報】10代LGBTQの48%が自殺念慮、14%が自殺未遂を過去1年間で経験|PR TIMES
男性ホルモン治療をしているFTMの精神面のQOL

2010年以降、ホルモン投与の有無によって、FTMの心理面がどのように変化するかの調査研究が増えています。
とある研究結果では、ホルモン治療をしている人はしていない人に比べて精神面のQOL(生活の質)値が高いと出ています。
また、ホルモン治療をしている人の方が、社会的苦痛や不安、うつの度合いが低いこともわかっています。
精神面での健康はホルモン治療している人の方が高いといえるでしょう。
参照:博士学位論文 Female-to-Male トランスジェンダー|東京大学学術機関リポジトリ
ホルモン治療は自分のペースで行なおう

現在の研究結果では、男性ホルモン注射で寿命が短くなることはないといわれています。ただし、自分の体にないものを入れるので、体に負担がかかることは事実です。
プラス面・マイナス面、どちらの面でも体に与える影響があるとされていますが、解明されていない点が多いのも現状です。
「FTMだから男性ホルモン注射をしなければいけないのか」といったら、決してそうではありません。「FTMだけど治療は望んでいない」という人もたくさんいます。
もちろん、男性ホルモン注射を投与することが心の幸せに直結する人もいます。
それでも、「まだ迷っている」「どうしたいか自分でもわからない」という方は、焦ることはありません。
自分と真摯に向き合い、この先どう生きていきたいか、じっくり考えてみてください。
男性ホルモン治療を「する」「しない」は、自分自身が決めることです。ゆっくり考えて、自分なりの幸せを見つけてくださいね。







